飲食店やご家庭で、天日塩や岩塩などの天然の塩を好んで使われる方は多いと思います。しかし、天然ではない塩とは何なのか、疑問に思ったことはありませんか?人工的に作られた塩、つまり精製塩は、私たちのミネラル不足の原因の一つとなっています。
天然の塩である天日塩は、自然の力で海水を蒸発させて作られる為、海水中の豊富なミネラルをそのまま含んでいます。これにより、私たちの体内のミネラルバランスを整える効果が期待できます。ミネラルは生体組織や生理機能にとって非常に重要で、骨の形成や筋肉の収縮、神経伝達など多くの機能をサポートしています。
この記事では、なぜ人工的に作られた塩である精製塩が蔓延しているのかを解説しています。日々の食生活に天日塩を取り入れていただき、健康の一助になれば幸いです。
なぜ塩選びが大切なのか?

天然の塩は、私たちの身体を正常に機能させるために必要なミネラルを豊富に含んでいます。ミネラルが不足すると、疲労感や免疫力の低下など、さまざまな不調が現れることがあります。
不調の多くは、水分とミネラルの不足による身体の渇きが原因とされており、適切なミネラルの補給は健康維持に欠かせません。良質なミネラルを補給するためにも塩選びが重要なカギを握っています。
ライナス・ポーリング博士に習う
ライナス・ポーリング博士は、20世紀を代表する科学者の一人です。1901年にアメリカで生まれた彼は、化学の世界に革命をもたらし、その名を歴史に刻みました。まず、彼の業績で特筆すべきは「化学結合の本質」に関する研究です。分子がどのように結合し、形を形成するのかを明らかにし、現代の化学や生物学の基礎を築きました。この功績により、1954年にノーベル化学賞を受賞しています。
また、ビタミンCの健康効果についても熱心に研究し、高用量のビタミンC摂取が風邪やその他の病気の予防・治療に効果があると提唱しました。この主張は当時大きな議論を呼びましたが、栄養学と医学の分野に新たな視点をもたらしました。
全ての病態、全ての病気、全ての病弊を追求すると、ミネラル欠乏に行きつく
ライナス・ポーリング
天日塩はどんな塩?非加熱で熟成された塩が身体に優しい

自然の太陽光と風を利用して、海水をそのまま天日干しにし、結晶化させた塩を「天日塩」と呼びます。天日塩は自然の恵みをそのまま取り入れることができ、良質なミネラルや酵素を豊富に含んでいます。
特に、加熱処理をしていない天日塩は、熱に弱い微量ミネラルも自然界のミネラルバランスに近い状態で摂取でき、さらに酵素が失活することもありません。
日本で生産されている食塩は何なのか?
現在、日本で製造される塩の多くは、加熱処理やイオン交換膜を用いて精製された塩が主流となっています。これらの精製塩は、製造工程でさまざまな処理が行われるため、海水に含まれる本来のミネラルや栄養素が失われてしまいます。
その結果、ほぼ純粋な塩化ナトリウムのみが残り、私たちが日常的に摂取する塩から得られるミネラルバランスが偏る可能性があります。
塩の選び方は製造方法をチェックしましょう!

塩の製造方法は大きく分けて4種類あります。それは、自然結晶、加熱(平窯・立窯)、イオン交換膜、逆浸透膜です。ミネラルバランスが最も優れているのは、言うまでもなく自然結晶による天日塩です。栄養素をできるだけ損なわない製造方法としては、加熱処理(平窯・立窯)や逆浸透膜を用いた方法が挙げられます。
一方、イオン交換膜で製造された塩は価格が安いものの、ミネラルバランスが悪いため、使用はおすすめできません。イオン交換膜を用いて生産される食塩は、ナトリウムイオンと塩化物イオンを選択的に濃縮するため、他のミネラル分が極端に少なくなります。このように製造された塩は「精製塩」と呼ばれます。精製塩は一般的な食塩と比べて純度が高く、不純物や微量元素の含有量が少ないため、食品や医薬品、化粧品の製造材料として利用されています。
しかし、私たちの健康に必要なミネラルが不足しているため、日常の食事での使用には適していないと言えるでしょう。健康的なミネラルバランスを求めるのであれば、自然の恵みをそのまま取り入れた天日塩を選ぶことをおすすめします。
- 天日塩:自然界の海水と風のみで自然結晶させた天然の塩
- 精製塩:海水をイオン交換膜や逆浸透膜などで人工的に精製した塩
天日塩は海水を自然結晶させる天然の塩

では、海水と天然の塩について考えてみましょう。雨として降った水は、ゆっくりと土壌を通り抜け、川となって海へと流れ込みます。この過程で、水は地球のさまざまな栄養分を取り込みます。山に降った雨と海の水が交じり合い、豊富なミネラルを含んだ海水が形成されます。海水の成分は約77.9%が塩化ナトリウムで、残りは栄養豊富な無機化合物、つまりミネラルで構成されています。
精製塩はどんな塩なのか?
対して、人為的にミネラルを排除した精製塩は塩化ナトリウム99%以上となり、その他のミネラルはすっかり排除され、さらに食品添加物を加えられる物もあります。結果的に、精製塩のみを食塩として摂られる方は、ミネラルが不足してしまい、生理機能の低下を引き起こす原因となります。
- 天日塩:塩化ナトリウム77.9%以上と栄養豊富なミネラル群
- 精製塩:塩化ナトリウム99%以上と、場合によっては食品添加物を使用
日本の塩の歴史は精製塩の歴史

日本の塩の歴史を遡ると、狩猟生活が終わり、穀物を中心とした農耕が始まった頃から塩の生産が始まったとされています。狩猟生活では、動物の肉や海産物を食べることで自然に塩分を摂取できており、塩分の補給は容易でした。また、自然の食物をそのまま食していたため、ミネラルバランスも豊富でした。
しかし、農耕生活に移行し、主食が穀物になると、食事からの塩分やミネラルの摂取が難しくなり、塩の生産が必要となったのです。
穀物主体の食事は多くのナトリウムを必要とする
一方、穀物主体の生活では、塩とミネラルの獲得が難しくなること、さらに植物には多くのカリウムが含まれていますので、余ったカリウムを体外に排出するために、ナトリウムの摂取が必要となります。古墳時代から塩の生産が始まったとされていますが、生活様式の変化に合わせるために、塩の生産が必要になったと考えられています。
昔の食塩の作られ方
では、塩はどのように作られてきたのでしょうか。塩の生産方法を振り返ると、弥生時代や古墳時代には「藻塩焼き」と呼ばれる製法が用いられていました。これは、焼いた海藻の灰を利用して塩を得る方法です。
その後、中世から近代にかけては塩田を用いた製法に移行し、約400年にわたって日本独自の製塩方法として発展しました。この塩田による製塩は、昭和30年頃まで続きました。現代に入り、製塩方法は機械化が進みましたが、昭和30年頃までに生産されていた塩は、海の恵みを豊富に含んだ天然の塩でした。
これらの伝統的な製法によって作られた塩は、ミネラルが豊富で、私たちの健康にとって重要な役割を果たしていました。
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